地方住宅供給公社の賃貸住宅における家賃改定について、最高裁判所は、公社物件の家賃は借地借家法に基づくべきで、一方的な値上げはできないという判決を2024年6月24日に下しました。
これまで、公社物件では入居者の同意なく家賃の値上げが行われていました。この判決は今後の公社物件の家賃や運営に影響を与えていくと見られています。
▼きっかけは住民の減額請求
神奈川県住宅供給公社が運営する賃貸住宅の入居者8人が、適正賃料を超えていると主張し、過払い分の返還を求めて2020年に提訴していました。
神奈川県住宅供給公社は、各物件の家賃をおおむね3年ごとに改定しており、14年間で月額2~3万円ほど増額していました。
該当の賃貸物件は、築年数が50年を超え、不動産鑑定によると相場家賃よりも2~3万円ほど高く、それを理由に提訴していましたが、神奈川県住宅供給公社は公社法・公社法規則を根拠に借主の同意なく家賃を値上げできると主張。一審の横浜地裁、二審の東京高裁も公社物件の家賃は借地借家法の適用外だとして訴えを退けていました。
しかし、最高裁は、「賃借人との間に設定される公社住宅の使用関係は、私法上の賃貸借関係であり、法令の特別の定めがない限り、借地借家法の適用があるというべきである」と述べ、公社法は補完的な基準を示したもので、借地借家法の適用を排除する規定ではないと判断、二審東京高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻しました。
借地借家法では、住宅市場の変動などに応じて、貸主と借主の双方が家賃の適正価格を請求できると規定されています。この判決により、今後は公社物件であっても、家賃値上げについて争えるようになります。
▼訴訟結果が今後に影響
最高裁の判断は「公社物件でも借地借家法に基づき、家賃の減額請求は可能」というもので、原告からの訴えである「過払い分の返還」については、差し戻された高裁で再び争うことになります。
仮に公社の家賃が適正家賃を超えていると判断されれば、原告の返還請求が認められることになるでしょう。となると、神奈川県住宅供給公社以外の公社物件でも同様の訴訟が起こる可能性があります。今後は、家賃改定時には公社側が借主の承諾を得る運用に変わるかもしれません。
さらに、都市再生機構(UR)でも法律に同様の文言があることから、URの賃貸住宅にも影響が広がると見られています。最終的な判決に注目が集まります。
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