top of page

投資用のマンション・アパート売却時の「税金」と節税に使える「控除」

 投資マンション経営では、毎年収支に基づく確定申告を行う必要がありますが、売却時はさらにその譲渡所得の申告が必要です。

 今回、物件の売却時に発生する税金と控除について理解を深めましょう。


▼売却時にかかる税金

 賃貸マンション・アパートのような事業用不動産の売却であっても、売却益(譲渡益)が出た場合は譲渡益に対して所得税・住民税がかかります。

譲渡所得と税額の計算式は

 ・譲渡所得=譲渡収入金額 −(取得費+譲渡費用)

 ・税額=譲渡所得×税率

です。

 このうち不動産の譲渡に関する税率は、譲渡する年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるか否で大きく異なります。


5年以下では短期譲渡所得として39.63%(所得税30.63% 住民税9%)に対し、5年超では長期譲渡所得として20.315%(所得税15.315% 住民税5%)です。

 もし譲渡損が発生した場合は同年中に売却した他の不動産の譲渡益と損益通算することができる一方、給与所得など他の所得と損益通算はできません。


▼売却時に利用できる特例

 投資マンション等の売却で適用される特例は居住用の不動産売却とは異なり、譲渡益が出た場合の特例(3000万円特別控除、軽減税率の特例、特定居住用財産の買換え特例)は使えません。

 事業用不動産を売却した場合に使える特例として代表的なものは「特定事業用資産の買換え特例」です。

 個人が事業用の資産を買い替えた場合に一定の要件を満たせば譲渡益の一部を将来に繰り延べることができる制度で、今の時点で納める譲渡所得税を節税することができます。


▽適用条件

 特例が適用される条件は、

  1. 買換資産は譲渡資産を譲渡した年かその前年中、または譲渡した年の翌年中に取得すること

  2. 事業用資産を取得した日から1年以内に事業の用に供すること

  3. 買換資産が土地の場合、譲渡した土地の面積の5倍以内であること

  4. 譲渡資産と買換資産が一定の組み合わせに当てはまること

の4つです。

 4.の組み合わせは10通りにもなりますが、ほとんどは一般的に関係ありません。今回は最も使い勝手が良い「9号特例」を紹介します。

 譲渡資産が「譲渡年の1月1日において所有期間が10年を超える事業の土地や建物」、買換資産は「国内にある土地等。建物又は構築物で、土地の場合は面積が300平方メートル以上であること」という組み合わせで特例の対象になります。


▽譲渡所得の計算

 特例を利用することで、買い換えた価格の一定額の課税の繰り延べが可能です。譲渡資産の譲渡価額より買換資産の取得価額が上回る場合は譲渡価額のうち80%が繰り延べになり、残りの20%が収入として課税対象です。

収入して課税される分に対応する取得費・譲渡費用を控除して税額が計算されます。

 譲渡資産の譲渡価額の方が買換資産の取得価額を上回る場合は買い換えた取得価額のうち80%は繰り延べができ、譲渡価額から取得価額の80%にあたる金額が控除され、残りが収入として課税されます。


 事業用資産の買換え特例は要件や計算が複雑で、使用して有利になるのかはシミュレーションしてみないと分かりません。

 適用を考える際は、税理士への相談をおすすめします。


一級ファイナンシャル・プランニング技能士 高柳政道


閲覧数:1回

Comments


bottom of page