今回は、相続人に行方不明者(不在者)がいる場合の手続について解説致します。
兄妹姉妹でさえも、様々な事情から、長年音信不通の状態となっている方がいて、そういった状況で、親が死亡し相続手続が必要となる場面が出てきます。法務局や金融機関で相続手続きを行う場合、被相続人の戸除籍類のほか、相続人の戸籍、印鑑証明書、捺印(実印)が求められ、遺産分割協議書や相続依頼書の提出が出来ず、手続が進められない事態となります。こういった場合の手段として、2つの制度について紹介します。
▼不在者財産管理人の選任
不在者について不在者財産管理人の選任が必要になります。申立ての詳細については、裁判所等のホームページに記載がありますが、ポイントを列挙したいと思います。
ポイント①:不在者財産管理人は、申立人側で指定できない
候補者を挙げることはできますが、裁判所はそれに拘束されず、利害関係のない者、つまり弁護士等が選任される可能性が高いです。
ポイント②:不在者財産管理人の報酬
不在者に十分な流動資産がない場合、予納金の納付(一般的に30万円~100万円)が必要になります。
ポイント③:原則として不在者のために、法定相続分を確保させなければならない
帰来時弁済といって、不在者が戻ってきたときに法定相続分を弁済できれば良いとして、不在者の相続分を確保させない例外的な取扱いもありますが、弁済者(他の相続人)の資力や信頼性など、裁判所が認めた場合に限られます。
▼失踪宣告の申立て
不在者が7年以上生死不明(危難遭遇でない普通失踪の場合)であれば、失踪宣告の申立てを行い、公告期間等を経て、戸籍上、死亡したものと擬制するものです。
これにより、その不在者について、相続が発生しますので、以後は、その不在者の相続人が、不在者の財産を相続したり、不在者がしなければならなかった各種手続きを行うこととなります。これについても裁判所等のホームページに記述がありますので、参照いただきたいと思います。
以上の2つの制度は、選択もしくは併用可能です(直ちに失踪宣告を選択した場合は、死亡擬制後は通常の相続手続きとなります)が、具体的な事情に応じて、進め方が決まっていきます。
実際の手続きには相当に時間がかかり、不在者財産管理人選任の申立て、不在者財産管理人の選任、遺産分割協議を経て不在者の財産を確保し、一定期間後、不在者について失踪宣告の申立てにより不在者の財産を相続人へ引継ぐまで、手続きの完了まで1年以上を要することもあります。
▼事前の対策
将来、共同相続人となる親族に不在者がいる場合は、事前に親など被相続人となる人から贈与等で財産を引き継いでおくこと、不在者を除いた相続人へ相続させる遺言書(公正証書遺言を勧めます)を作成することを検討してもらうのが良いでしょう。
人の死というものは突然に起こりうるものです。もし親族に行方不明者がいる場合は、将来の相続関係を見越して、今できる対策を検討されることをお勧めします。
立花司法書士事務所 司法書士 立花幸嗣
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