総務省の『住宅・土地統計調査』によると、使用目的のない空家の数は2018年で349万戸、2030年には470万戸に達すると推計されています。
令和5年6月14日、空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(空家対策措置法)が公布されました。施行日は交付から6ヶ月以内とされています。
▼「管理不全空家」に対する措置
今回の改正において多くの人が懸念するものに「管理不全空家」に対する措置があります。特定空家になるおそれのある空家を「管理不全空家」とし、早期段階で市区町村から指導・勧告して対応できるようにした改正です。
特定空家とは、塀や屋根が崩落しかけていたり、衛生上有害であったりと、対応の緊急性が高い空家のことです。 空家対策措置法の施行とともに、平成27年5月から、その除却や修繕などを行政が指導・勧告・命令・代執行できる対象として創設されました。
しかし、特定空家の状態になってから対応を進めることには限界があります。そこで「管理不全空家」という新たな空家の定義が創設されました。
「管理不全空家」は放置すれば特定空家になるおそれのある空家のことであり、国土交通省の資料では、窓が割れているまま放置されている空家を管理不全空家のイメージとして掲げています。
▼固定資産税が6倍になることも
管理不全空家として市区町村から勧告を受けた場合の最大の悪影響は、固
定資産税の小規模住宅用地の特例が解除される可能性があることです。
この特例は、住宅用地のうち200㎡内の部分に対応する固定資産税の課税標準額が本来の6分の1に減額される特例です。
これが解除された場合、固定資産税が最大6倍になってしまう可能性があります。特定空家では既に施行されている措置ですが、この措置を管理不全空家にも適用することによって、特定空家の発生を抑制する狙いがあります。
例えば、相続などで取得した親などの生前の住まいは、あえて空家となった家屋を取り壊さないことによって、この特例を継続適用することが可能でした。
改正後は、管理不全空家に該当しないよう定期的なメンテナンスをする必要性がより高まることになります。
▼空家の支援措置も拡充へ
管理不全空家の創設は空家に対する管理強化を目的とする改正ですが、他にも、行政による空家の活用拡大を支援する前向きな改正点もあります。
例えば、地域の再生拠点などを「空家等活用促進区域」に定めることで、法律上、用途変更や建替え・改築が難しい場所の空家にも対応しやすくなります。
また同法以外にも、空家の売買を金融・税制面から支援する対策も継続されています。
買い手側には、住宅金融支援機構と自治体が連携した融資制度(フラット35地域連携型)において、空家の取得を対象とした住宅ローン金利の引き下げ措置があります。
売り手側には、相続空家の3千万円の特別控除があり、令和5年度税制改正で適用対象が拡充されています。
一級FP技能士 石田夏
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