ハウスリースバックとは「自宅を売って賃貸してもらう」という注目の仕組みです。不動産業者か
ら案内を受けたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。リースバックで買い取った物件は、借り手付きの収益物件ですので、空き室対策が不要という点は非常に魅力的です。
しかしハウスリースバックの買い手(貸主)には注意点もあります。
■ハウスリースバックのニーズ
ハウスリースバックを活用する売り手のニーズとして、次のようなものがあります。
▼当座の資金が必要
家族の就労不能等から、住宅ローン等の資金繰りが難しくなった人の資金調達に活用されます。売却代金を当座の賃料に充て、生活を立て直すことが主な目的です。
▼家を手放したくない
資金調達の目的が第一ですが、そこには自宅そのものに価値や愛着を感じ、手放したくない気持ちがある場合が多いです。この場合、生活を立て直したら即座に買戻しを請求されます。
▼売却を周囲に知られたくない
売却すれば通常は物件情報が公開され、周囲に知られてしまいますが、ハウスリースバックはそのまま住み続けられるため、周囲に売却事実を知られたくない人にニーズがあります。
▼老後の生活費に
2千万円の老後の資金問題が注目される中、今後「自宅はあるけれど生活資金が足りない」という高齢者による活用が見込まれます。生活資金の調達方法としてはリバースモーゲージ(※)が有名ですが、こちらは一定の資産価値がある物件でなければ対象にならないため、その対象外となった人から申し込まれることが考えられます。
(※)自宅を担保にお金を分割で借りる方法。生存中は返済不要というメリットがある。
■買い手(貸主)になるメリット
まず購入当初から借り手が決まっているため、初期の広告宣伝費が不要である点があげられます。また、売り手(借主)の多くはその家に住み続けることを希望しているため、長期間の賃貸収入が見込めることも利点です。さらに売り手(借主)の元自宅であることから、入居前のクリーニングやリフォーム費用といった、通常の賃貸で必要となる初期費用を抑えることもできます。
■買い手(貸主)の注意点
▼買戻しがなくても収益が出せるか
売り手(借主)は必ずしも買戻してくれるわけではなく、気が変わって早々に退居することもあり得ます。売り手(借主)の退去後に次の借主を見つけられるか、あるいは売却できるか検討して物件を選ぶことが大切です。
▼退居後が大変
売り手(借主)は、長年自宅として使用していた感覚のまま住み続けていることが考えられるため、退去時は、通常よりリフォーム等の費用がかかる可能性があります。原状回復の範囲も通常の賃貸より判定が難しいといえるでしょう。
▼賃貸期間に注意
「短期間だけ買い取って欲しい」というニーズもありますが、あまり早く買戻されると、売却益が生じることが考えられます。
もしこの売却益が短期譲渡所得(※)に該当すると税率は約40%(譲渡所得税・住民税)です。早期の買戻しで売値を決める時は、売却益の所得区分にも注意しましょう。
(※)売却した年の1月1日を基準に保有期間が5年以下の物件が該当。
ファイナンシャルプランナー 石田 夏
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