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『消費者契約法』賃借人に不利益な情報ほど事前開示しよう

 消費者契約法という法律があるのはご存じでしょうか。この法律は、事業者と消費者との間にある格差(情報の質量や交渉力)に着目し、事業者の一定の行為によって消費者が誤認・困惑した場合には、消費者は契約の申込みや承諾の意思表示を取り消すことができると規定しています。

 消費者契約法の規制対象である「事業者」とは、「法人その他の団体」と「事業のために契約の当事者となる個人」のことです。賃貸経営者は、サラリーマンの副業であったとしても「事業者」にあたり、消費者契約法の規制対象となります。

 ここで、最近の事例を題材に考えてみましょう。


▼事例

▽経緯

 原告は50代男性です。妻と集合住宅で暮らしていましたが、長年音の問題に悩んでいました。

 そこでマンションの最上階で隣室も静かであれば音に悩まされることはないと考え、分譲マンションの最上階の角部屋を購入しました。

 原告は、販売業者にこれまで音の問題で悩んできたことを伝え、購入前に隣室の住人について確認したところ、「普通のお勤めをされている一人暮らしの女性であり、音の心配をする必要はない」との回答を得たことから、当該マンションを購入して入居しました。


▽問題および提訴

 しかし、入居後に、隣室の女性はプロのバイオリン奏者であり、自宅でバイオリンの練習や生徒のレッスンをするつもりであることが判明したので、当該マンションの売買契約を解除し、代金の返還を求める裁判を提起したというものです。

 消費者契約法4条は、

①事業者が、

②契約の締結について勧誘をするに際し、

③重要事項について事実と異なることを告げたり(不実告知)、重要事項について消費者の不利益となる事実を故意・重過失によって告げなかったり(不利益事実の不告知)することによって、

④消費者が誤認して契約の申込みや承諾をしたときには契約を取り消すことができる

と規定しています。


▽結論

 この事例では、隣室の住人がプロのバイオリン奏者であるのに「普通のお勤めをされている」という不実告知、バイオリンの練習や生徒へのレッスンが隣室内で予定されているという不利益事実の不告知が存在しますので、原告の請求が認められるものと思われます。


▽賃貸経営への教訓

 賃貸経営者としてこの事例から得るべき教訓としては、賃借人予定者が気にするかもしれないと思われる不利益情報こそむしろ積極的に事前開示したほうが、後日の法的紛争を回避することができ、

余計なコスト、手間や時間をかけずに済むということになるでしょう。   

元弁護士Y



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