前号に続きサブリース方式のリスクについて解説していきます。
▼マスターリース5つのリスク
賃貸住宅管理業法を所管する国交省は、マスターリース契約について、次の5点のリスクがある旨の注意喚起をしています。
契約期間中や契約更新の際に賃料が減額される可能性があります
契約期間中でも契約が解約される可能性があります
家賃を受け取るだけでなく出費もあります
融資審査の際に不正が行われたという事例もあります
サブリース業者が破綻したり、契約期間中に契約解除を迫られた事例もあります
▽賃料の減額
まず、借地借家法32条は、賃借人による賃料の減額請求を認めています。
したがって、「家賃保証」や「空室保証」が明記されているマスターリース契約賃借人であるサブリース業者は、オーナーに対し、賃料の減額請求をすることができます。
なお、賃料の減額をしない旨の特約(家賃の改定日が明記されているケースも含みます)をした場合であっても、そのような特約は借地借家法32条違反で無効になります。
▽契約の中途解除
つぎに、マスターリース契約書に契約を中途解除できる旨の特約を記載しておけば、サブリース業者は契約期間中であっても契約を解除することができます。
これに対し、契約期間中のオーナーからの契約解除は、仮に特約があったとしても許されません。また、契約期間満了後であっても、オーナー側に契約更新を拒絶する正当事由がない限り、借地借家法28条によってマスターリース契約は更新されることになります。
そして、通常のマスターリース契約では、原状回復費用(退去時のハウスクリーニング費用を含む)や修繕費用はオーナーの負担とされてますので、これらの費用負担を想定しておく必要があります。
このようにマスターリース契約では、サブリース業者は賃借人に該当するため、借地借家法による厚い保護を受けます。その結果、「約束されたお金を約束された期間に受け取る」ことを前提にしてローンを組んでマンション等を新築したり購入したりしたオーナーが予期せぬ不利益を受けるリスクがあります。
▼マスターリースのリスク解除
マスターリース契約の不利益を回避する方法があります。それは、マスターリース契約を定期建物賃貸借契約(借地借家法38条)にすることです。
定期建物賃貸借契約にすると、家賃の減額請求をマスターリース契約で禁止することができるようになりますし、オーナーの側に更新拒絶の正当事由がなくても契約期間の満了によってマスターリース契約を終了させることができるようになります。
次回(本テーマ最終回)は、具体的なケースをもとに、もう少し詳しく見ていきます。
元弁護士Y
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