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【法律】『ペット飼育禁止条項』の法的な意味

 賃貸物件のオーナーにとって、入居者のペット飼育は悩ましい問題です。

 そもそも、入居者のペット飼育を禁止したいのであれば、賃貸借契約に「ペット飼育禁

止条項」を入れておかなければなりません。このペット飼育禁止条項は、賃貸物件の汚損を防ぎ、他の入居者の快適な居住環境を維持するという点で合理性がありますので、法律的に有効であると考えられています(東京高裁昭和55年8月4日判決も結論同旨)。


 ただし、自室内で飼育が完結し、鳴き声や悪臭のおそれもない小動物であれば、他の入居者の迷惑にならないため、賃貸借契約に「ペット飼育禁止条項」を入れていたとしても、入居者に対し、これら小動物の飼育禁止を強制することは極めて困難です。裁判所は、これらの小動物を入居者が飼育していたとしても、ペット飼育禁止条項の適用対象外であると判断する可能性が高いでしょう。


ペット飼育特約の効力

 ところで、このペット飼育禁止特約の効力はそれほど強いものではありません。たとえば、室内犬を静かに飼っており、自室の玄関から賃貸物件の敷地外に出るまでは入居者が抱きかかえて移動しているようなケースでは、入居者に対して賃貸物件からの退去を求めたとしても、裁判所がその旨の判決を出してくれる可能性は高いとはいえません。


 結局のところ、賃貸物件からの退去という重大な法律効果を裁判所が肯定するためには、賃貸人の信頼関係を破壊したといえる程度の重大な用法義務違反が存在する必要があります。そのため、賃貸借契約に「ペット飼育禁止条項」があるケースであっても、軽微な用法義務違反にとどまるとして賃貸物件からの退去が否定される場合もあるでしょうし、賃貸借契約に「ペット飼育禁止条項」がないケースであっても、入居者によるペットの飼育が賃貸人の信頼関係を破壊する程度の重大な用法義務違反といえるときには、賃貸物件からの退去を求めることができる場合もあります。


 このように、賃貸借契約に「ペット飼育禁止条項」を入れておいても入れておかなくても、入居者のペット飼育が重大な用法義務違反といえるものであれば賃貸物件からの退去を求めることができますが、ここで重要なのは、「ペット飼育禁止条項」があれば重大な用法義務違反と言えるケースであっても、なければ言えないときがあるということです。

 整理すると次のようになります。

  • 「ペット飼育禁止条項」があってもなくても退去が認められないケース

  • 「ペット飼育禁止条項」があれば退去が認められるが、なければ認められないケース

  • 「ペット飼育禁止条項」があってもなくても退去が認められるケース


「ペット飼育禁止条項」は契約に入れるべき?

 つまり、賃貸借契約に「ペット飼育禁止条項」を入れておくことで、ペット飼育に関係

するときの賃貸人の信頼関係は簡単に壊れやすいものであるとの法的な主張が可能になるわけです。また、訴訟に至らなくても、入居者に対して「契約書で禁止していることですから守ってください」と求める法的な根拠になりますから、「ペット飼育禁止条項」は入れておくべきものといえます。


(元弁護士Y)



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