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借主からの造作買取請求 賃貸人はどうする?①

 造作買取請求はご存じでしょうか。借地借家法33条1項は、次の3つの要件を満たせば、賃借人は、賃貸人に対し、時価で造作を買い取ることを請求できるものとしています。


  1. 賃貸借契約が終了したこと

  2. 賃貸借契約終了時に「造作」が現存すること

  3. 賃貸人の同意を得て付加した造作や賃貸人から購入した造作であること


▼そもそも造作とは何か?

 「造作」とは、「建物に付加された物件で、賃借人の所有に属し、かつ建物の使用に客観的便益を与えるもの」(最高裁判所昭和29年3月11日判決)のことです。造作は「建物に付加された物件」、すなわち、建物とは独立しているものの、建物に付属して一体として扱われる状態にあるものを言います。

 裁判所に認められた造作の具体的としては、ドアの仕切り、ガスや配電設備、水洗便所、シャワー設備、レストラン用店舗の設備一式(調理台・レンジ・食器棚・空調・ボイラー・ダクト等)があります。

 これらに対し、家具や什器備品など、独立性が高く、簡単に撤去可能で、撤去しても価値が減らないものは「造作」には該当しません(家庭用エアコンについて造作性を否定した東京簡易裁判所平成22年1月25日判決参照)。

 また、壁板、床板、天井などは、建物に付合して独立性を失っていることから、「造作」には該当しません。

 また、造作は「建物の使用に客観的便益を与えるもの」でなければなりませんので、賃借人の個人的な趣味や特殊用途のために付加したものは「造作」には該当しません。


▼買取請求への対抗方法

 賃貸人が借主の造作買い取り請求を拒否するためには、次の方法が考えられます。


  1. 賃貸借契約書に造作買取請求権を放棄する特約を明記しておく

  2. 「同意はしていない」と主張する

  3. 対象物件が「造作」に該当しないと反論する


 そもそも、造作買取請求権は当事者の合意で排除することができます(賃借人に不利な特約を無効とする借地借家法37条は、造作買取請求権を認めた同法33条を含めていないため)。

 そのため、賃貸借契約書に造作買取請求権を放棄する旨を明記しておけば、賃借人は賃貸借契約終了時に造作買取請求権を行使することはできません。

 つぎに、賃貸人の同意は黙示の同意でもよいと解釈されています。「造作の付加が特に不利益でなければ、賃貸人は同意を拒否することができない」と解釈されているため、賃貸人が明示の同意をしていなくても黙示の同意が認定されるケースがほとんどです。

 造作買取請求権を特約で排除することが可能であることから、造作付加を広く認めて賃借人の利益保護を図りつつ、賃貸人の利益保護は造作買取請求権を放棄する特約を入れておけばよいという価値判断になります。

 この意味でも、造作買取請求権を放棄する特約を入れておくことが非常に重要な意味を持つことになります。


 次回は、賃貸借契約終了時の諸問題についてお伝えします。


元弁護士Y

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