高齢化が進む現代では、誰もが将来的に判断能力が低下し、自分の財産を管理できなくなる可能性があります。
そのような人を守るために作られた制度が『成年後見制度』です。
今回は、成年後見制度の特徴について紹介します。
▼判断能力が不十分な人の財産を守る!
成年後見制度は、平成12年に介護保険制度と一緒に誕生した比較的新しい制度です。
すでに判断能力が不十分になった人のための「法定後見」と、将来、判断能力が不十分になった時に備えて任意後見契約を結んでおく「任意後見」があります。
成年後見人の仕事は主に、医療や介護の手配・手続きを行う「身上監護」と、預貯金や財産を管理する「財産管理」です。
成年後見制度を利用することで本人の財産を後見人が管理・取引が出来るようになるため、本人が悪徳商法に騙されて高額な買い物をしたとしても、後見人が契約を取り消し、お金を取り返すことが可能になります。
▼成年後見は遺産分割の強い味方
判断能力がない人が遺産相続する場合にも、成年後見制度は有効です。
亡くなった人が遺言書を作成していなかった場合、相続人全員が参加することによる遺産分割協議で遺産の行方を話し合うことになりますが、相続人が1人でも欠けていたら無効になってしまいます。
判断能力が欠けている人が相続人にいた場合は、遺産分割協議自体が進められないのです。
しかし、成年後見制度を利用すれば、成年後見人が本人に代わって話し合いに参加することで、遺産分割協議を進められるようになります。
▼成年後見にはデメリットもある
判断能力が低下した人とその財産を守るための制度として有効な成年後見ですが、利用する上ではデメリットもあります。
まず、費用がかかる点です。家庭裁判所への申し立ての際に費用が発生するほか、弁護士や司法書士等の専門職が成年後見人として専任された場合は報酬を支払う必要があります。
また、一度選任された成年後見人を好き勝手に解任することはできません。後見人を解任できるのは、後見人が不正な行為を行った等の解任事由に抵触していると認められた場合のみです。
▼積極的な資産運用には向かない
積極的な資産運用に向かない点にも注意が必要です。あくまで本人の財産の管理・保護のための制度であり、不動産投資のような運用は行えません。
また、相続税対策として生前贈与を行ったり、生命保険に加入したりといった行為もできなくなります。
所有する不動産の売却は成年後見制度でもできますが、「売却して得たお金で介護施設に入居する」といった本人にメリットがある場合しか認められません。
▼不動産をお持ちなら家族信託も検討を!
財産の管理を信頼する家族に任せたい場合は、家族信託という選択肢を利用する方法もあります。
家族信託は本人が元気なうちから財産を管理する権利を受託者に移す制度のことで、成年後見ではできない資産運用や相続税対策が可能です。
一級ファイナンシャル・プランニング技能士 高柳政道
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