最近、誰もが知る不動産会社などの有名企業が不動産取引で騙され巨額の被害にあった事件がニュースで報道され話題となりましたが、そういった報道等でしばしば事件の首謀者として取り上げられる、いわゆる地面師について、今回はお伝えしていきたいと思います。
▼地面師について
地面師とは、他人の不動産を本人になりすまして、売却等を行い売却代金等を詐取する詐欺師(の集団)のことをいいます。地面師は戦後の混乱期やバブル期に暗躍していたようですが、昨今においても、不動産の値上がりが顕著な地域を中心に活動が目立つようになっています。
もともと、不動産取引の知識を持つ者が、その知識を悪用して地面師となっていることは間違いありません。おそらく、どの事件も以前に不動産関係の仕事に就いたことのある人物がメンバーに入っている可能性が非常に高いと思います。非常に残念なことは、昨今報道された事件の一部で、私どもの同業者である司法書士が地面師として関与していたことです。
▼被害に遭いやすい物件
被害に遭いやすい物件は、
空き家や更地であり所有者が遠方に住んでいること
値上がり傾向にある人気エリアであること
抵当権等の権利がついていない物件であること
などが挙げられます。こういった物件は、地面師が活動するに当たり、入り込み安く、関与すべき取引関係者が最小限で済むため、真の所有者などから怪しい動きを感知される危険が小さいからです。
▼注意すべきこと
地面師の被害に巻き込まれない為の注意点についてですが、まず所有者側でいえば、登記済権利証、登記識別情報通知、印鑑証明書、印鑑カード、実印、本人確認書類の管理をしっかり行うこと。物件を定期的に見回ること、遠方の場合は、場合により不動産管理会社へ委託する等して見回ってもらうこと(ただし登記関係書類を預けることは厳禁です)。事後的な確認になりますが固定資産税納税通知書が毎年来ることを確認(記載がなくなった物件がないかを確認)することも重要です。
これから不動産を購入する立場からいえば、やたらと購入を急がせるような取引は注意すること。極力、信頼のおける司法書士を自ら選任すること。自ら選定した司法書士でない場合は、仲介業者に伝えるだけでなく、出来るだけ直接、司法書士へ自己の懸念点を伝えておくこと。
特に登記済権利証や登記識別情報を紛失しているようなケースでは、司法書士に、より厳格な(必要かつ十分な)所有者の本人確認をしてもらうこと。厳格な本人確認を行うことを嫌がるような売主や仲介業者である場合は、取引を行えなくなってもやむを得ないと覚悟すること。また、極力、売買契約締結後ではなく売買契約締結前に、その旨を売主や仲介業者へ十分に伝えておくことも重要となります。
地面師対策に限りませんが、売買契約締結前と売買契約締結後では、実際的には、立場の重さに変化が生じますので、まだ契約の拘束力の生じていないという意味でより立場の高い売買契約締結前に必要な要望や確認をお願いしておくことが非常に重要となります。
立花司法書士事務所 司法書士 立花幸嗣
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