今回最終回となります更新料に関して、よくご相談を受ける内容にお答えします。
Q1 法定更新に切り替わるケースはどのような場合ですか?
A1 賃貸人と賃借人が賃貸借契約を更新する旨を合意しない限り、法律上は法定更新に切り替わります(法定更新に切り替わっても基本的には契約条件は同じですが、契約期間については期間の定めがあるものからないものに変更されます)。
ただし、実務的には賃貸借契約書で自動更新条項(「期間満了の○か月前までに双方から何も通知がなければ従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとする。」)を設けていることがほとんどでしょうから、自動更新条項によって合意更新されることになります(自動更新後の契約期間は、更新前と全く同じです)。
Q2 契約期間2年の賃貸借契約で更新料(賃料1か月分)が未払いのまま3回自動更新されたとき、未払いの更新料が家賃の3か月分たまったので賃貸借契約を解除することができますか?
A2 一般的に未払いの賃料等が家賃3か月分になれば賃貸借契約を解除する「正当な事由」(最高裁判所昭和29年1月22日判決によれば、「賃貸借を終了させ明渡しを認めることが、賃貸借当事者双方の利害関係その他諸般の事情を考慮し、社会通念に照らし妥当と認むべき理由」)があると認められます。
しかし、更新料請求権の消滅時効は5年です。そのため、3回目の更新料請求権が発生した時点では既に1回目の更新料請求権は時効消滅しているので、未払いの更新料は家賃2か月分しかないことになり、更新料の不払いだけでは賃貸借契約を解除する「正当な事由」が認められることは難しくなります。
Q3 自動更新されても賃借人が更新料を支払ってくれないとき、どうしたらよいでしょうか?
A3 更新料請求権は5年で時効消滅するため、賃借人が任意に支払ってくれないときは5年以内に民事訴訟を提起する必要があります。
とはいえ、家賃1か月分程度の更新料のために裁判をすることはコスパが悪すぎるため、家賃の未払いがなく利用状況に問題がなければ現実的には賃貸人が泣き寝入りするしかありません(保証人を入れていたとしても、保証人が任意に支払ってくれなければ、やはり5年以内に裁判をしなければなりません)。
そのため、泣き寝入りを避けるための最も確実な方法は、更新料の未払いについても保証対象にしている家賃保証会社を入れておくことです(家賃保証会社は、普通は請求すればすぐに支払ってくれます)。
Q4 退去時に未払いの更新料を敷金と相殺することはできますか?
A4 できます。なぜなら、敷金とは、賃貸借契約から生じる一切の債務を担保するためのものだからです(民法六二二条の二第一項)。
そのため、家賃保証会社を入れないのであれば、ある程度の金額の敷金を預かっておくべきです。
元弁護士Y
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