▼令和5年10月から始まるインボイス制度とは
インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除の新しいルールです。仕入税額控除とは、消費税の課税事業者(基準期間の課税売上高が一千万円以上の個人や法人)が消費税の申告をするとき、納税額から控除できる金額をいいます。一見、課税事業者のみが知っておけば良さそうな制度ですが、免税事業者にも関わりの深い制度になります。
▼インボイス制度で変わること
課税事業者が仕入税額控除を適用するためには、一定の記載要件を満たした請求書等(適格請求書等)の保存が必要となります。
インボイス制度の開始後、この記載要件が、現行の区分記載請求書等保存方式から次のように変わります。
【現行】
①書類の作成者の氏名又は名称
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに区分して合計した税込対価の額
⑤書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
【インボイス制度】
①適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
②取引年月日
③取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
④税率ごとに区分して合計した税抜価額又は税込価額及び適用税率
⑤税率ごとに区分した消費税額
⑥書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
▼適格請求書発行事業者への登録
右の「①」のとおり、適格請求書等を発行するには、適格請求書発行事業者の登録番号が必要です。
登録番号は「T+数字13桁」で、登録申請によって付与されます。
適格請求書発行事業者に登録するかどうかは、事業者の任意です。しかし、課税事業者で課税売上を立てている(例:オフィスなどの賃料を受け取っている等)不動産オーナーであれば、登録を検討することになると考えられます。
※要件を満たさない請求書等でも、一定期間は、仕入税額控除を一部適用できる経過措置があります。
▽適格請求書発行事業者の登録開始
令和3年10月1日から、適格請求書発行事業者の登録申請の受付が開始されています。もし令和5年10月1日ちょうどから登録を受けるには、原則、令和5年3月31日までに申請が必要です。もちろん、インボイス制度開始後に登録申請することも出来ます。
▽免税事業者が登録を受ける場合の経過措置期間の延長
免税事業者が適格請求書発行事業者に登録するには、事前に「消費税課税事業者選択届」を税務署に提出して、課税事業者になってから申請するほか、「経過措置期間」を利用して申請することができます。経過措置期間中の登録申請であれば、選択届を提出しなくても、登録日から課税事業者になります。
▽経過措置期間の延長
令和4年度税制改正大綱によると、右の経過措置期間が「令和5年10月1日~令和11年9月30日までの日の属する課税期間」に延長される予定です。
改正前は、「令和5年10月1日の属する課税期間のみ」でしたから、免税事業者が、より柔軟なタイミングで課税事業者になれるよう改正されます。ただし、延長された期間は、免税事業者に戻れない「2年縛り」の対象となる見通しです。
一級FP技能士 石田夏
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