親が住んでいる自宅とは別に、自身で持ち家があるなどして親の死後親の自宅が空き家になる方もいらっしゃると思います。
今回はそのようにして引き継ぐであろう自宅の処分に関して、税金の特例の視点からお話をしたいと思います。
▼深刻化する空き家問題
空き家問題の深刻化を受けて平成27年に空き家対策特別措置法が施行されました。
令和元年9月30日に総務省から公表された「住宅・土地統計調査」によると、平成30年10月時点
の空き家は848万9千戸と平成25年時点から29万3千戸増加しており、この問題は現在進行形であることが分かります。
▼空き家の発生を抑制するための特例措置
平成27年11月20日に国土交通省が公表した「平成26年空家実態調査」によると、空き家となった住宅を取得した経緯のうち56.4%が相続を原因としていました。
そこで、「相続した空き家を他の人が活用出来るように税金を軽減しよう」と言う税制面の優遇措置が導入されました。
この特例は空き家特例などと言われますが、相続で取得した家屋またはその敷地を売却して利益が出ても3千万円までは利益から差し引けると言うものです。3千万円も利益から差し引いてくれるのですから、それなりに条件もあります。
▼適用条件
▽新耐震基準を満たしていること
この特例は、古くて耐震性が低い空き家が増加しないことを目的としています。
そのため次のような少々きつめの条件が付されています。
「昭和56年5月31日」に建築基準法の耐震基準が改定される以前に建築された家
耐震リフォームをして新耐震基準の耐震性を満たした家
昭和56年以前の建物と言うことは、既に38年以上経過しているので、家としての価値は「?」です。
そこで、耐震リフォームをしない代わりに、古家を取壊して更地化した場合でもこの特例は適用出来るようになっています。
▽区分所有建物でないこと
特例適用条件として、区分所有建物でないことがあります。簡単に言えばマンションはダメで戸建は良いと言うことです。
親が亡くなる直前まで一人で住んでいた家であること
この特例は平成28年の税制改正で導入され、令和元年12月末が期限でしたが、平成31年度の税制改正で期限が令和5年12月末まで延長されました。
当初から「親が亡くなる直前まで一人で住んでいた」と言う条件がありましたが、今回の改正でその条件が緩和されています。
近年では、高齢者が自宅を出て施設に入所し、そのまま亡くなることも多くなってきています。施設に入所していたことをもって「直前には住んでいなかった」とすることは現実的ではありません。
このため、介護施設等に入所していて既に空き家になっていた場合でも一定の条件の下でこの特例を適用することが出来るように変更されたのです。
今回は特例の概要を述べさせていただきましたので、次回はこの特例を使うか否かについてお話を進めて行きたいと思います。
税理士法人吉田会計 税理士 吉田和義
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