前回に続き、今年執行される相続税法の改正について解説します。
▼介護貢献度を寄与料として評価
これまでは、親と同居していた相続人の妻が介護をしていたとしても、夫の取り分としては評価されても、相続人ではない妻の貢献度は評価されませんでした。
今回の改正により、相続権はありませんが「特別寄与料」として評価されることになりました。
この制度では相続が発生した時点で、介護の貢献度に応じて相続人に対し請求できます。
ただ、特別寄与料の請求先は義理の兄弟姉妹になるため、現実的にはかなり大変です。合意できないときには、家庭裁判所が提示している算定式【1日当たり8千円程度を目安に介護期間を乗じる】を参考に決めることになります。
親族以外の第三者が介護に協力したとしても、この特別寄与料は認められない点は注意が必要です。
▼遺留分を正当な権利として保障
遺留分とは、民法で示されている相続人に認められた最低限の取り分で、法定相続分の半分にあたる額となっています。しかし、遺言状が存在すると、故人の意志が尊重され、遺留分に満たない財産しか相続できない相続人が出てくるケースがあります。
例えば、相続人の子が3人(A・B・C)いて、故人が対立していた特定の子Cには、遺留分を大きく下回る財産しか受け取れない遺言状を作成したとします。
これまでは、遺言状に不備がなければ、故人の意思を尊重し、ほかの相続人から遺言どおりの配分に同意を迫られ、しばしば問題になってきました。
故人の意志を優先するか、法律に沿って遺留分を保障するか、これまではあまり明確でありませんでした。
対立して結論が出ないときは、遺留分の履行を求める側が家庭裁判所に持ち込み、調停や和解が成立しない限り、遺留分を獲得できませんでした。
今回の改正では、遺言状の中身がどうあれ、遺留分の確保が権利として認められました。
▼預金仮払い制度の創設
これまで、遺産分割の協議中は、故人の預金を含め金融資産の引き出しはできませんでした。
今回の改正により、一定限度額内であれば、金融機関から故人の預金を引き出すことができる「仮払い制度」が創設されました。
例えば葬儀費用の支払いや残された家族の生活費など、相続が確定する前の段階で、必要な諸経費に充当することができます。遺産分割協議が長引く時などに利用できる制度といえます。
引き出し額の上限は、相続人1人当たり、法定相続分の3分の1に当たる金額となる予定です。
今回の改正は、社会情勢や実状に配慮した改正といえるでしょう。
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