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賃貸経営における確定申告の注意点

令和2年分の主な改正点

▼基礎控除の改正

 令和元年分まで一律38万円だった基礎控除が、令和2年分からは、本人の合計所得金額に応じて右図のように改正されました。


<合計所得金額とは>

 総所得金額、退職所得、山林所得、分離課税の所得の合計額

 (注)損失の繰越控除前の金額、分離課税の長・短期譲渡所得は特別控除前の金額となります。


▼青色申告特別控除65万円

 事業的規模の不動産貸付業を対象とする青色申告特別控除65万円は、令和2年分から55万円になります(10万円控除はそのまま) 。

 ただし、電子帳簿保存かe-Taxによる電子申告を行うことで、令和2年分からも65万円の控除を受けることができます。電子帳簿保存は事前の承認が必要ですので、今から準備するのであれば電子申告をすることになりますが、事前準備が必要ですので、早めにご確認ください。


▼期限内の申告・納税が困難なとき

 個別延長の申請ができます。新型コロナの影響であれば、申請書の提出に代えて申告書の余白に一定事項を記載する対応も認められます。詳しくは国税庁のFAQ「申告・納付等の期限の個別延長関係」をご確認ください。


確定申告の注意点

▼未回収の家賃があるとき

 家賃の滞納があっても、支払日が到来すれば未収家賃として収入計上します。ただし、回収不能となったものは、貸倒損失として次の扱いになります。

 ・事業的規模の貸付け

  回収不能となった年の必要経費になります。


 ・事業的規模でない貸付け

 未収計上した年にさかのぼって、回収不能分の収入をなかったものとし、当時の確定申告の修正(更正の請求)を行います。

 ただし不動産所得が赤字の場合等、更正の請求ができない場合もあります。


▼必要経費の判定


<必要経費になるもの>

・賃貸物件にかかる以下の支出…借入金の利子(※1)、地代、管理委託費、火災(地震)保険料、修繕費、水道光熱費、減価償却費など

・賃貸経営にかかる以下の支出…給与(※2)、旅費交通費、消耗品費、交際費、広告宣伝費、賃貸経営に関する書物の購読料など

・その他…賃貸物件の固定資産税、事業税、登録免許税、不動産取得税、印紙税など


<必要経費にならないもの>

・借入金の元本、賃貸物件の取得価額に含める費用(不動産を取得するときの仲介手数料、立退料等※3 )、資本的支出、10万円以上の固定資産(※4)など

・家事関連費(プライベートにも関係する支出)のうち業務に必要なものが明確に区別できない諸費用

・所得税、住民税、延滞税、加算税、過怠税、罰金など


(※1)賃貸開始前の期間に対応する利子は、建物や土地の取得価額に含めます。なお土地の利子は損益通算ができません。

(※2)原則、生計を一にする親族・配偶者への給与は必要経費になりません。ただし事業的規模であれば事業専従者給与の一部、青色事業専従者給与のうち届け出た範囲内を必要経費にできます。

(※3)建物の取得価額に含めるものは、減価償却で耐用年数に応じて必要経費になります。

(※4)減価償却で必要経費になります。20万円未満であれば一括償却資産として3年で、30万円未満であれば青色申告者に限り一時で償却することもできます。


一級FP技能士 石田夏

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