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不動産経営における法人化は進めるべきか?「税金面」から考える!

 「賃貸収入が増えてきたら、法人化すると税金が安くなる」。そのことは知っていても、法人化のベストタイミングには色々な説があり、いまひとつ判断しづらいのではないでしょうか。

その理由は、法人化で税金を安くするしくみが2つあり、それぞれ効果的に利用できる人が違うからなのからです。


▼所得600万円で税率が逆転

 個人にかかる税金には、所得税・事業税・住民税があります。このうち所得税は、所得が高い部分ほど税率が上がる仕組みで、5%~最大45%まで上昇します。   一方、法人の所得にかかる実効税率は、所得800万円ほどまで24%前後です。

 所得が低いうちは個人の方が税金は安いのですが、所得500万円~600万円の間でこの税率は逆転します。従って、現在、不動産から600万円以上の所得がある方は、その所得を法人に移した方が節税できるというわけです。これは、全員に共通する法人化の検討ラインになります。


▼法人化で税金を安くするしくみ

 法人化で税金を安くするしくみは、2つあります。

 1つ目は個人と法人の「税率差」に注目するしくみです。さきほどの、個人の税率が法人を上回ったら所得を法人に移す考えがこれになります。

 すでに不動産所得が600万円を大きく超えている方であれば、この税率差を使い、不動産所

得を法人と個人それぞれの税率が安い金額帯に分散させることで全体の税率を下げるという考え方から始めるとよいでしょう。

 法人に移した所得を個人に戻すには、役員報酬として支払う方法で行います。


▼給与所得控除額をつかうしくみ

 2つ目は「給与所得控除額」です。法人から個人に支払う役員報酬は、「給与所得控除額」という独自の控除額を差し引いて税金を計算します。つまり法人から個人に所得を戻すと、給与所得控除額の分だけ必ず非課税の所得が生まれるのです。給与所得控除額は、1人あたり年間65万円から最大220万円で推移します。例えば法人から600万円の役員報酬を1人に支給した場合、その控除額は年間174万円です。

 さらに、控除しきれなかった所得にかかる所得税率は下がりますし、給与なので事業税もかかりません。もし法人に1円も所得を残さずにすべて個人に支給したとすると、その節税額は、所得400万円で約32万円、500万円で約50万円、600万円で約67万円になります。

このことから、所得がいくらであろうと、理論上は給与所得控除額の分だけ必ず節税できることになります。では一刻も早く法人化した方がいいのかというと、そうではありません。

 現実には法人化することで、増える費用(法人の設立費、社会保険料の会社負担、法人住民税の均等割)があります。

 これらを差し引いても十分に利益が出るラインをとらなければ法人化を進めてはいけません。さらに役員報酬は期中に調整できないため、1円も利益を残さないのは仮の話で、現実にクリアできる保障はありません。

 したがって、ここでも不動産所得600万円を検討ラインとすることをおすすめします。


▼兼業オーナーや家族経営は所得300万から

 兼業オーナーの方や家族で不動産経営をされる方は、専業の方や1人経営より、「税率差」や「給与所得控除額」による節税効果を受けやすくなります。

 そのため、不動産所得が600万円未満でも、法人化するメリットがある場合が多いのです。例えば、次のような方です。

  • 不動産所得は600万円未満でも、本業の所得と合わせると600万円以上になる兼業オーナーの方

  • 役員報酬を支払う相手が2人以上いる方

 このような方は、不動産所得が300万円以上あれば、ぜひ1度法人化の節税シミュレーションをしてみてください。


▼まとめ

  • 不動産所得600万円は全員共通の法人化検討ラインとすべし

  • 兼業オーナーや家族経営者は300万円から検討すべし

(注)文中の税率、税額の計算は次の方法で行っています。

・法人…法人税、法人地方税、法人事業税、地方法人特別税、法人住民税で計算したもの。資本金1億円以下、超過税率・軽減税率の要件に一切該当しない、不動産賃貸業と仮定して計算。

・個人…所得税、事業税、住民税で計算したもの。所得控除や青色申告特別控除額は考慮していない。


ファイナンシャルプランナー 石田 夏



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