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建築の観点から見た 賃貸住宅の『音対策』について

 賃貸住宅で起こる問題のひとつは騒音問題ではないでしょうか。

 今回は、最近ニーズが高まりつつある賃貸住宅の防音対策をいくつか紹介してみたいと思います


▼建物の構造における音対策

 賃貸住宅の音対策として建物の構造を確認する人は多いと思います。

建物の構造には、木造・鉄筋コンクリート造・鉄骨造などがあり、木造よりも鉄筋コンクリートや鉄骨造の方がより防音効果が期待できます。

 そして、部屋と部屋の間にある壁がコンクリートで造られているかどうかです。その厚みは15㎝以上が望ましいです。

 それでは、木造には防音効果は期待できないかというところですが、必ずしもそうではありません。

 上下階への防音対策として、吸音効果のある材料が入っている場合や吊り天井という振動を伝え難くするもの、更にはゴム系のマットを敷きこむことで防音に配慮している物件など様々です。また、部屋同士の間の壁に防音効果を発揮するような作り方をされている『界壁』というものもあります

 その物件の立地や賃料、その他の条件などにより当初の作り方に上記でご説明したような違いがでてくると思います。新築感が消えて入居率が下がってきた時に、設備交換や内装リフォームする際には壁や天井の内側の再工事はコストもかかる為、改修工事ではそこまでするケースは少ないでしょう。

ですので、これか10年後の差別化がさらに必要とされるであろう時期に備えて、新築時に工事をしておき、早めに工事費用を回収されることをお勧め致します。


▼排水音への対応

 また、プランニング上も隣や上階の排水音が気にならないか確認しておく必要があります。どうしても設計上、位置の移動が難しければ排水管への防音対策がありますので配管への防音も事前に確認しておくべきだと思います。

 今後は「遮音性」ニーズの高まりに伴い、賃料への影響が出てくる可能性があります。


▼界壁の重要性

 今年の5月頃に大手企業の賃貸管理物件に『界壁』が足りていなかったというニュースがありました。

 建築基準法上の『界壁』とは、【共同住宅や長屋などの各住戸の間を区切る壁】です。

この『界壁』の役割は、遮音上問題となる隙間のない構造にすると共に、防火区画よりもさらに細かい範囲で火炎の拡大を防ぐことにより、利用者が安全に避難する時間を確保し、延焼を防ぐことにあります。

 耐火構造・準耐火構造・防火構造(火災時に一般的な作り方よりもより燃えにくい構造壁)とし、小屋裏または天井裏に達するように設けなければならないとしています。

この『界壁』がなければ、遮音性は下がります

 この企業の遮音性に対する疑問は噂がでていたので、このニュースの後にネット上をはじめ色々と今も話題になっています。遮音性の低い賃貸住宅は、入居率への影響もあると思われますのでイニシャルコストの削減のし過ぎは後々痛い目にあうかもしれないというケースでした。


 また、建築基準法には『界壁』を設けなければいけない建物が明記されています。『界壁』が義務付けられている建物に『界壁』がない場合には、遮音性ももちろんですが、火災時の安全性も法律で定めた基準を担保できていない違法建築になります。

万が一の時には大きな問題になりかねませんので、図面・建物を確認いただき、今後の新築の際にもご注意願いたいと思います。


BORDERLESSデザイン 一級建築士 田主健二



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