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相続手続の迅速化に寄与する「法定相続情報証明制度」

 今回は、施行後3年となる「法定相続情報証明制度」について、解説致します。この制度は法務省が相続登記を促進する方策の一つとして創設したものです。


▼法定相続情報証明制度とは

 相続発生後、相続人(申出人)が所定の形式に沿って法定相続情報一覧図という書面を作成の上、登記所(法務局)に戸除籍謄本等(以下「戸籍等の束」といいます)の相続証明書一式とともに申出書を提出することにより、登記官が、この一覧図の写しに認証文を付して申出人に無料で交付します。その後、この認証済み一覧図(以下「一覧図」といいます)を各相続手続で利用してもらうというものです。


▼『一覧図』利用のメリット

 本制度のメリットは、通常であれば、金融機関等の各窓口で、戸籍等の束を提出しなければならなかったところ、一覧図で代えることができるため、審査の時間を短縮でき、また一覧図は必要とされる枚数の交付を受けられるため、同時並行で各相続手続を進めることが可能になります。

なお、相続税の手続でも利用できるようになっています。


▼特に有効なケース

 被相続人が各地に不動産を所有していたり、複数の金融機関や証券会社等に預金、投資信託、株式等の財産を保有していた場合などでは、手続の時間を大幅に短縮できます。

 特に株式等は換金のタイミングで大きく損益に影響が生じる場合もありますので、必要に応じて他の相続手続と同時並行的に行えるメリットは大きいものと思います。

 勿論、戸籍等の束を複数セット用意すれば同時並行的に手続は可能ですが、被相続人の本籍地の変遷や相続人の数などによっては、一式でも相当なボリュームとなる場合があり、郵送での取寄せであれば、郵便小為替の準備など、相当な手間と発行手数料が必要になります。


▼専門家への委任

 本制度は、登記所に申請しますが、相続人本人が利用できるのは勿論、手続きを他者に依頼したい場合、親族が弁護士、税理士、司法書士、行政書士などの所謂「八士業」に委任することができます。


▼注意点

 本制度を利用するに際しては、次のような注意点があります。

  • 一覧図は所定の形式で作成する必要がある

  • 一覧図で代替できるのは戸籍等の束であり、各相続手続において、遺産分割協議書、印鑑証明書、相続放棄者がいる場合は、相続放棄申述受理証明書などが別途必要になる

  • 「八士業」に委任する場合は、報酬が発生する

  • 一覧図の再交付も可能ですが、発行を受けられる期間が本制度申出日の翌年から5年間です。

 実際に利用するタイミングは相続後になりますが、事前に知っておくと慌てず利用できますので、ご承知おき頂ければ幸いです。


立花司法書士事務所 司法書士・立花幸嗣

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